膝関節グループ
毎週火曜日 午後
変形性膝関節症、特発性大腿骨内か骨壊死症、前十字靱帯損傷、後十字靱帯損傷、半月損傷 、反復性膝蓋骨亜脱臼・脱臼、膝離断性骨軟骨炎
大腿骨内顆骨壊死(えし)症
膝関節を構成する太ももの骨は膝関節で内側と外側の二つに分かれますが、その内側の部分のことを大腿骨内顆と呼びます。膝関節は人の体重を支える荷重関節であり、歩いている時などに多くの力が関節軟骨に伝わります。大腿骨内顆骨壊死(えし)症は関節軟骨の土台になっている骨が弱くなる病気です。
原因
膠原病、悪性腫瘍や臓器移植後などに対しステロイドを大量使用することによって発生することが知られています。また明らかな原因がなく発症する場合もあり特発性と呼ばれます。特発性は60歳以上の女性に多く発生することが知られています。高齢で骨が弱くなっているところに大きな力が加わり、小さい骨折がおこりそれがきっかけとなって病気が起こるのではないかと推測されています。
症状
膝の内側に急激に発症する鋭い痛みが特徴的です。変形性膝関節症と異なりそれまで全く症状のなかった膝が急に痛み出すのが特徴的です。膝に体重をかけると痛みが悪化して、歩行や階段の昇り降りが困難になる場合があります。ひどい場合には夜寝ているときに痛みもあります。この鋭い痛みは長い時間が経過すると徐々に和らいでゆきますが、土台となっている骨が陥没して軟骨も痛んだ場合には、変形性膝関節症に進行してO脚に変形し、関節の動きが悪くなってくる場合があります。
診断
診察室で膝の動きや腫れや、歩く時の痛みの程度や杖などが必要かどうか調べます。膝に体重をかけた状態で、いろいろな条件でX線撮影を行うことにより骨壊死部の範囲や病気の進みぐあいを知ることができます。ただし病気が始まったばかりの時はX線検査上正常にみえる場合もあり、X線検査を繰り返してはじめて診断がつくことがあります。膝関節の中をより詳しく調べるためMRI検査が行われることもあります。
治療
変形性膝関節症と治療のおおまかなところは同じです。
<保存療法>
自宅での足挙げの体操、膝の曲げ伸ばし体操やウォーキングなどの運動療法により関節の動きをよくして、下肢の筋力を維持、強化することにより痛みが軽くなります。それに加えて壊死した大腿骨内顆へかかる負担を減らすため、足底板という靴の中に入れる中敷きの使用をお薦めしております。
<手術療法>
大きく分けてすねの骨の骨切り術、人工関節の2つの方法があります。
高位脛骨骨切り術:大腿骨内顆の骨壊死部にかかる負担を減らす目的で、すねの骨の膝関節に近い部分で骨切りして人工的にX脚にするという方法です。骨壊死部に自家骨軟骨組織や自家骨を移植する手術を同時に行うこともあります。人工的に骨折を作る手術で骨が完全につくまで松葉杖が必要などの生活上の制限が生じます。入院は1ヶ月前後で、完全に元の生活に戻るには3ヶ月程度必要です。
人工関節手術:変形した関節の表面を切り取って、金属と高分子ポリエチレンからなる人工関節に取り換える手術です。人工関節手術には膝全体を人工物で置換する人工膝関節全置換術(TKA)と内側の悪い部分だけ人工物で置換する人工膝関節単顆置換術(UKA)の2種類があります。患者さんの状態により、よりよい方を選択しております。この二つの手術とも術後成績も安定しており、術後は痛みが楽になりなります。病気がすすんで大きく変形した人にも行うことができ、術後すぐに体重をかけて歩くことができ平均3週で自宅に退院することができます。人工関節には術後正座ができない、術後10年―15年経過すると入れ替えの手術が必要な人がいるという欠点もありますが、70歳以上の高齢者においても安定した術後成績が期待できます。